風立ちぬ


アダルティーなジブリ


堀辰雄の小説「風立ちぬ」の主人公に零戦の設計者、堀越二郎を据えその半生を描いた作品。実際のエピソードを下敷きにしつつも、ヒロインとの恋愛シーンなどにオリジナル要素を盛り込んだストーリーが展開される。主人公の人物像は完全なオリジナルとなっている。

・あらすじ  主人公二郎は、薄情で感情表現乏しく、自分中心な人物。そんな彼の求めるものは究極の美しさ。それは、二郎にとって飛行機であり、女性の美である。

二郎は震災のときに助けた女中のおきぬに恋をしていたが、本作のヒロイン菜緒子は、そのときに二郎に恋をする。そんなことは、つゆ知らず、菜緒子と久しぶりに再開しても誰だか気付かない二郎。2人目の子供が生まれるといって、おきぬを恋敵から排除した菜緒子は、まんまと二郎のハートをゲットするわけだが、菜緒子は重い結核を患っていた。

二郎は、菜緒子が山奥のサナトリウムに寂しく入院していても、一度も見舞いにも行かず、書いた手紙も自分のことばかり。長く生きるよりも、自分が一番キレイな瞬間を恋人にみてもらうことを選択した菜緒子は、一人サナトリウムを抜け出す。

・感想
自らの命を賭してまで、療養所を抜け出し主人公の元へ向かうヒロイン。残された短い時間を大切な人一緒に過ごしたいけれど、決して束縛することなく、主人を支える健気な姿に心打たれること間違い無し。男は綺麗なものにしか興味がなくて、女はそれを受け入れろっていうのがテーマ?!

庵野の棒読みがダメだという批判をよく見かけるが、的外れも良いとこ。
だって、これだけ完璧な作品を作れる天才が、最も重要な主役の声にわざわざ素人を器用しているのは、狙いがあってのことだし、人間味に欠ける二郎を表現するためにはピッタリの配役だと思える。何よりも、あの声で「キレイだよ」なんて言われたら女性なら、みんなキュンとくるのでは?